大幡斉 先輩
南海電鉄株式会社
鉄道営業本部 運輸部 営業課 主任
2006年 南海電気鉄道株式会社に入社
駅係員、車掌、運転士、指令員など現場での勤務を経て
2011年より現職。
和歌山大学 経済学部
市場環境学科
54期卒業
企業サイトURL:http://www.nankai.co.jp/
取材者
藤原梨央
和歌山大学 経済学部 市場環境学科 3回生
━━和歌山大学経済学部に入学されたきっかけは何でしたか?
実家から通えて国立であるということに加え、経済について学べば金融やメーカー、鉄道など、多くの分野で役立つと思ったからです。また地域経済に密着したことを学びたかったことや、関西を元気にしたいという思いがあったので、和歌山大学に入学しました。もちろん、もともと和歌山が好きであったことも影響しています。
━━学生時代に取り組まれたことはなんですか?
絵画部と、ブルードロップスというスキューバダイビングのサークルに所属していました。部活やサークル以外でも仲の良かった友人とよく遊んでおり、とても仲間に恵まれた4年間でした。絵画部では絵を描くことはもちろん、キャンプやスキーなど、スキューバダイビングのサークルではライセンスを取るだけではなく和歌浦での海中清掃や白浜でアマモを増やし理解を深めるなど地域と密接した活動も行いました。
取り組んだと言うよりも仲間と遊びながら勉強した感じですね。ただ漠然と時間がすぎていったわけではなく、毎日が充実していた学生時代でした。今でもその仲間とは住んでいるところや仕事が違っても付き合っていける一生の友達です。大学で培えた人間関係が今でも生きているのはとても大きな財産です。
3回生のときには河音ゼミに所属し、和歌山の田舎の価値向上・活性化について研究しました。ただ考えるだけではなく実際に外に出る活動が多かったです。熊野で休校になった敷屋小学校を拠点にして「NPO共育学舎」という活動(http://mokuzoukousya.jimdo.com/npo共育学舎について/)をされている三枝さんとともに田植えなどを行い、また地域について学び、どうすれば地域を盛り上げることができるのかということを実習しながら学びました。今年のゴールデンウィークにも熊野を訪れましたが、10年経った今、関東地方から熊野へ田舎暮らしを求めて来た若い人が増え、三枝さんの取り組みが実を結んでいることを知りました。継続は力なりということをとても実感しました。
━━学生時代に考えていた就職観について教えてください。
関西、大阪や和歌山を盛り上げたかったので、地元に貢献できる企業を探して就職活動をしました。南海電鉄に就職を決めたのは、生まれも育ちも大阪の貝塚市で、物心がつく前から祖父と踏み切りでずっと電車を見ていた思い出があり、小さいころから南海電車が好きだったということと、大阪や和歌山の経済や文化を発展させる仕事ができるということが大きかったです。阪急は梅田、神戸、京都、南海なら難波、和歌山という風に、沿線の街づくりは私鉄の大きな仕事ですから。
もともと大学入学当初からやりたいことのイメージができていたというわけではなく、3回生の夏休みに将来についての漠然とした不安や危機感を持ち、今後どうするのかを考えたときに、地元に残りたい、地元に貢献したいという思いが強くあることに気づきました。そこで、金融や鉄道会社など、どのような会社が自分の思いを実現させることができる会社なのかということを考え、就職活動に取り組み始めました。公務員ということも考えたのですが、例えば貝塚市で働いても貝塚市のことしかできない、自分が活性化させたいのは自分の住んでいる南海沿線だということで、就職するのは南海電鉄しかないと考えました。大学時代の学びとは直結しているわけではないのですが、そこでもやはり、将来どうしたいのか、どういう風に考えているのかということを真剣に話し合い、刺激し合えた友人たちの存在があったからこそ自分のやりたいことに気づけたのだと感じています。
━━今の仕事にやりがいを感じるのはどういうときですか?
今、広告宣伝を担当しているのですが、ひとつひとつの仕事の影響が大きいと感じます。例えば1枚の小さなポスターを作ったとしても、それが南海電鉄のすべての駅に貼られ、毎日何万人という人に見られることになります。この仕事の与える影響が大きいということは、下手な広告宣伝物は作れませんがその分良いものをつくれば商品の売上や切符の販売枚数につながり数字として出てくるので、とてもやりがいを感じます。
━━今までの仕事のなかで、転機はありましたか?
2009年に駅や車掌・運転手や指令員などをしていた現場から本社に配属されたときと、2011年の4月に今の部署に配属されたときです。2009年には営業企画といういわゆる鉄道の営業を企画するところに配属されました。最初の業務は、こうや花鉄道・天空という観光列車の立ち上げを担当させていただき、その後は駅中ビジネスの担当で売店やレストランなどの駅構内の店のマネジメントをする仕事を経験させてもらいました。そして2011年には販売促進課に配属され、そこではじめて広告宣伝に関する仕事に触れました。
関西空港にLCCが就航し関西空港がにぎわったことに伴い、南海の乗車人員が増えているのですが、力を入れて広告宣伝している関西空港利用者向けの企画乗車券の販売が非常に好調で、企画乗車券の広告宣伝の仕事を通して難波をはじめ沿線がにぎわい、微力ながら地域活性化に貢献しているのだと感じることができています。入社する前は運転士や車掌など運転に携わる仕事を経験することが一つの目標だったのですが、初めて営業企画や販売促進に触れたことで、この仕事の影響力の大きさやお客さまからの反応など、新たな面白さを見出しました。車掌、運転士と小さいころのあこがれの仕事を経験でき、次の目標であり自分のやりたかった南海沿線の活性化ができるようになったというところが転機になったのだと思います。
━━企業として求める人物像について教えてください。
企業として求める人物像は会社を代表する部署ではないので答えることは難しいのですが、個人的には「やる気がある人」「行動できる人」ですね。まずやる気があるというのは、仕事に対し前向きに、貪欲に取り組むことができる人。そして目標や夢を持っている人のことです。仕事に対する姿勢と自分自身のメンタル面両方で「やる気」を持っていてほしいです。次に「行動できる人」ですが、これは「目標」や「夢」だけではなく、実際に自分自身で行動できる人です。もちろん「目標」や「夢」は大切ですが、それだけでは絵に描いた餅です。実際に行動し、形となって初めて認められる仕事となりますので、自分の「目標」や「夢」を実現するために実際に行動できる人がいいと思います。やる気があって、明確な目標を持ち、本気で南海沿線のために頑張って行動できる人!そんな学生がいたら素晴らしいですね。また自分の考えを何が何でもこうするという力技ではなく、「理解を得つつ周りを巻き込んで前に進めることができる人」であれば理想です。
━━では、大幡先輩の考える今の学生に求めるものに加え、経済産業省が提唱している社会人基礎力の中で重要な力をあえて選ばれるとしたらどれだと思いますか。
働きかけ力、実行力ですね。アイデアだけの人よりも、とにかく行動してくれる人がいいです。他にチームワークも大事ですがチームに埋没してしまうというのもよくないし、私たちは鉄道会社の総合職で人数も少ないので、周りを巻き込んで、班やチームでトップに立つくらいの実行力が必要です。すぐに身に付くものではないけれど、まずは自分がこうしたい、という強い意志や思いを持つこと。それがあれば自然と身につくものだと思います。
━━学生に薦める書籍があれば教えてください。
2つあります。1つは「マーフィーの法則」。これはアメリカで1940年代から出ている名言集で「失敗する余地があるなら、失敗する」で有名な本です。仕事ではなく生きていく上でいろいろと考えさせられるところがあります。例えば「プリンターが故障する確率は印刷する書類の重要度に比例する。」「機械が動かないことを誰かに証明して見せようとすると、動きはじめる。」というものがマーフィーの法則で、普段生活をしている上での「あるある!」が載っており、普通に読んでいても面白いです。嫌なことや失敗したとき「まあ世界ってこんなものだよね」と笑って流すために、このマーフィーの法則は知っていて損は無いと思います(笑)
もう1つは、6年くらい前に読んだ本ですが、「スタバではグランデを買え」という本が面白かったです。ジャケットにひかれて買ったのですが、これが中々面白く、スタバでは、グランデはショートの2倍の量なのにショートとグランデの価格差はどの商品でも100円、それでスタバは儲かるのか?どうして100円ショップは成り立つのか?家電量販店はなぜ近所に林立するのか?などといった日常の疑問から経済を解説している本です。
また消費者側から見る価格と企業側から見る価格にどういった違いがあるのか、企業は高い価格でも買ってくれる人には高く、安くないと買わない人には安く売るのが基本である、といったことが書かれており、中々考えさせられます。この本は経済学を勉強しているみなさんや、経済学に興味のない人にもお勧めできます。参考にどうぞ。
━━今の大学生に向けて、エールを含めてアドバイスをお願いします。
大学生活は人生のGWです!自分の本当にやりたいことをやってください。大学時代ほど自由に時間を使えるときはありません。社会人になったらホント休みないですよ。
例えば大学の夏休み2か月あるならなんでもできます。自転車で日本一周、ヒッチハイク旅行や長期登山、インドに1か月旅行など、本当にやりたいことがあるならば今がチャンスです。悔いのない時間を過ごしてください。
また就職活動は不安ですよね、経験したこともないし、いきなり知らない会社へ行って話をしなければならないし。でも学生は就職活動をしているとき、本当に中立な目線で企業を見ることができるので、怖がらずに1社でも多く様々な会社を回ってみれば良いと思います。企業研究に役立つだけでなく、多くの社会人と話していくうちに、自分自身の価値観や考え方、企業イメージも変わっていきます。また最初は戸惑っていた社会人との会話も、徐々に上手くなりますよ。場数や経験って本当に大事です。また、もし和歌山に関する企業に就職を希望するのであれば和歌山大学出身、というのは武器になるので、そういうところは出していけばよいと思います。
<取材の感想>
今回の取材を通して、まずは自分のやりたいこと・明確な目標を見つけ、それに対して本気で取り組めば、将来その目標を達成することができるのだということを学びました。今までも「目標に向かって頑張る」という言葉は何度も聞いていましたが、例えば部活動や受験のなかでの目標を持つことと、「自分が本当にやりたいこと」を「仕事によって」実現させることとは少し違うのだと感じ、また、やりたいことに真剣に取り組むことはとても面白そうだと感じました。就職活動までのあと2か月間、自分のやりたいことを実現させるにはどうすればいいのかをよく考え、就活に臨みたいと思います。
今回のような取材をしたことや、社会人の方と直接このようなお話をする機会は今までなかったので、上手くできる自信がなく緊張もしたのですが、今回大幡先輩とお話させていただいたことは本当に良い経験になりました。今回は、貴重なお時間を頂きありがとうございました。
取材日:2013年9月18日(水)
時間:13時〜15時
場所:南海電鉄株式会社 本社事務所
取材・記事編集:藤原梨央(経済学部3回生)